自分で交際相手と直接交渉することの是非

相手方との直接交渉は大丈夫?

相手方に対し不倫慰謝料などを請求する場合において、当事務所へのご相談やご依頼の前に、ご本人様で相手方への直接の連絡や交渉をしていたり、既に相手方から誓約書や示談書などの書面を取得されていたりする事案がしばしばあります。
今回のコラムでは、このような慰謝料請求をするご本人様が相手方と直接交渉することの是非について取り上げてみたいと思います。

自分で行うことのメリット

今回は、ご自身の夫の不倫を疑った妻が、夫の交際相手の自宅を突然訪れた上、不倫の事実を認めさせ、その場で300万円の慰謝料を支払う旨の示談書(事前に妻が用意していたもの)に署名押印をさせたというケースで検討してみたいと思います。
このように、興信所への調査や弁護士への交渉を依頼しない場合の主なメリットとしては、①費用が発生しない、②相手方の出方次第では短期間で慰謝料が取れる可能性がある、③仮に相手方が慰謝料を約束通り払わなかったとしても、相手方が不倫の事実や慰謝料の支払義務を認めた証拠が入手できる、などが考えられるかと思われます。

デメリット1:示談書の効力が争われる可能性

しかし、今回のような経緯で取得された示談書は、③のように後日、相手方が支払いを拒んだような場合、契約書とのしての効力が争われる可能性があります。
示談書や和解合意書は契約書の一種ですが、本来、契約書は、当事者間において一定期間をかけて交渉を行い、双方が納得、合意した上で、その合意した権利義務内容を書面化の上で双方で署名押印されるべき書面と言えます。
しかしながら、今回のケースのように、妻が事前に用意した示談書に対し、交際相手に考えるいとまや反論に機会も与えずに署名押印させた場合、将来の裁判において、公序良俗違反(民法90条)、錯誤(95条)、強迫(96条)などの理由で、その効力が争われる可能性が高く、たとえ相手方が署名押印したからといって、法的に100%有効な契約書とは言えません
また、インターネット上で掲載されている誓約書や示談書のサンプルは、あくまで一般的なサンプルに過ぎず、本来であれば個々の事案に即した内容を記載すべきだったにもかかわらず、そのまま流用してしまったことが原因で、示談書全部又は一部の有効性が争われる事案も実務上ではよくあります
もっとも、仮に法的効果を生じる契約書としての効力が認められない場合でも、当時、交際相手が不倫の事実を認めていたとの事実認定をするための証拠として活用できることはあります。

デメリット2:刑事事件になる可能性あり

交際相手の自宅や勤務先を突然と訪れ、交際相手が面会を拒絶したにもかかわらず署名をもらうまで帰らないなどの行為まであると、その行為態様によっては、刑事上の不退去罪(刑法130条)、強要罪(223条)、威力業務妨害罪(234条)などの犯罪が成立する可能性も出てきます。
仮に実際に逮捕まで至らず、警察への相談段階で済んだとしても、将来における妻からの慰謝料請求訴訟において、被告となる交際相手側から「警察に相談するほどの原告(妻)側に行き過ぎた行為があった」などとして、慰謝料の減額事由として反論されることはよくあります
また、程度が著しい場合には「不必要に名誉やプライバシーが侵害された」などとして別訴提起(名誉毀損やプリバシー権侵害を理由として交際相手が妻に対し慰謝料請求すること)されてしまう可能性もあるので注意が必要です。

リスク軽減のためにも事前の法律相談がお勧めです

配偶者の不倫の疑念や一定の証拠を取得された場合、今回の事例のような相手方に対する直接行動をとってしまうのは心情的には分からなくもないところではありますが、交際相手への慰謝料請求権を自らの行為で減少させないためにも、上記のような法的リスクが生じうることはしっかり知った上で判断することはとても重要だと思います。
また、ご自身ではまだ足りていないと判断した証拠でも、弁護士が検討した結果、相手方への慰謝料請求交渉や訴訟に十分足りているケースもありますので、実際に相手方へ直接アクセスする前に、一度法律相談を受けていただくと様々な法的リスクを軽減することができるでしょう

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