独身と偽った交際の慰謝料

独身と偽って交際すると慰謝料の対象になります

通常、交際当事者間でのトラブルで慰謝料が発生することはありませんが、発生する可能性がある一つの類型として、既婚者が独身と偽って交際する場合があります。
古い判例では「貞操権の侵害」、近時の判例では「人格権の侵害」などの理由で不法行為の成立を認め、独身と偽った側に慰謝料の支払いを命じています。
なお、論理的には既婚女性が男性側を騙して交際を開始させた場合も不法行為が成立しそうですが、裁判上の実例では、既婚男性が独身であると偽って独身女性と交際を開始し、性交渉も持ったという場合がほとんどと言えます。

慰謝料の額は?

慰謝料を決定する主な要素としては、判例上の傾向としては、独身と偽った態様、交際期間(騙し続けた期間)、女性側での妊娠や中絶、流産の事実の有無、交際終了後の男性側の態度(連絡を一方的に遮断したなど)が挙げられます。
金額は事案にもよりますが、100万円〜300万円程度が事案としては多いようです。やや極端な事案としては、交際期間が約12年間に及んだケースで500万円という高額な慰謝料を認定した裁判例(東京地裁H29.8.29)もあります。

相手方からのよくある反論

この事案で相手方からよくある反論として、「自分は最初から既婚者であると言っていた」という主張があります。
もっとも、交際開始のきっかけが婚活サイトやお見合いサービスといった場合は、そのような言い逃れは当然認められませんし、交際期間中におけるメールやLINEのやりとりが残っていれば、お互いに独身であることが前提である内容であることは比較的分かりやすいと言え、かかる反論が認めることは難しいと言えるでしょう。

請求にあたり注意すべきこと

慰謝料を請求するにあたり注意すべき点は、相手方の配偶者から不倫慰謝料の請求がくる可能性があるという点です。
客観的な事実としては既婚者と交際していたという事実には変わりなく、独身と思っていたという点は主観(内心)の問題であり、例えば、交際相手の妻(又は夫)から、「交際開始時から既婚者だと知っていたはずだ」との前提で慰謝料請求してくる場合があります。
また、よくあるパターンとして、交際の途中から既婚者であると知ったが、その後も性交渉を含む交際を継続してしまった場合、その後の交際には不貞行為の不法行為が当然成立し、交際相手の妻(又は夫)からの慰謝料の対象となりますので注意が必要です。

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