婚姻費用はいつまでさかのぼって請求される?

1 はじめに

もっぱら男性側からになりますが、「婚姻費用は、いつ分までさかのぼって請求されてしまいますか。」とのご相談をよくいただきます。

今回のコラムでは、過去分の婚姻費用について、いつ分までさかのぼって請求されるのか(できるのか)について、裁判実務も踏まえつつ検討していきたいと思います。

2 婚姻費用の争いが生じる場合は?

婚姻費用は、通常、別居開始から離婚に至るまでの別居中の生活費の問題として理解されているかと思われます。

また、争いとなってしまうケースは、「別居後、全く生活費が支払われてない場合」「支払いはされているが、金額が少ないため受け取る側が不満を持っている場合」がほとんどかと思われます。

3 婚姻費用はいつ分から発生?

そして、「婚姻費用はいつ分までさかのぼって請求されるのか」という点については、裁判所での決着時(具体的には調停成立時または審判確定時)から見て、どこまで過去分が請求されてしまうのかということになり、分岐点としては、①別居開始時まで、②調停や審判前に、内容証明郵便などで具体的に婚姻費用を請求されていた場合はその時まで、③調停や審判の申し立てをされた時まで、が考えられるかと思われます。

この点については、具体的な請求時から(②のような請求があった場合はその時から)とする審判例が多いですが、③の裁判所に婚姻費用の調停や審判を申し立てがなされた時から起算する方法が主流となりつつあるように思えます(東京高裁H30.4.19、H30.4.20など)

実際の婚姻費用の調停でも、過去分の婚姻費用をいつ分からさかのぼるかという点は当然議論の対象となりますが、調停申立て時を基準として過去の不足分を計算するという流れになることが多いというのが実感です。

4 審判の場合は一括払い?

婚姻費用の事件は調停が不成立となった場合、審判手続きに自動移行することとなりますが、その手続で下される審判(判決のようなもの)は、未払部分についてはまとめて一括で支払うことを前提とする主文になります(婚姻費用の月額が10万円とされ、未払期間が6か月間であれば、通常「60万円を支払え」との主文となります)。

このように支払う側としては、過去の不足分がまとめて請求され、支払わないと給与差押えなどの強制執行を受ける可能性も出てきます

そのため、請求されている側の方からご相談をいただいた場合、婚姻費用算定表から算定される大まかな婚姻費用の額を基準として、少なくとも現在の支払い額との差額分を、調停又は審判申立時から貯蓄しておくことをアドバイスさせていただいております。

そうすることにより、もし将来の審判でまとまった金額の未払部分の支払いが命じられてしまった場合は、それを原資にお支払いただくことで給与差押えなどの強制執行を回避できることとなります(幸いにも予想よりも未払分が低額に止まった場合は、お支払いただいた後の差額分はご自身のものとしていただく形となります)。

5 調停の場合は未払分の分割も可能?

他方、調停段階で婚姻費用について和解ができる場合は、未払部分については必ずしも一括ではなく、相手方が承諾すれば分割払い(具体的には、将来分の婚姻費用に上乗せして毎月支払う方法など)にすることも可能となります。

6 婚姻費用でお困りの際はご相談を

今回のコラムでは、婚姻費用はいつまでさかのぼって請求されるかを中心に検討致しました。しかし、婚姻費用の問題は、これ以外にも、①双方の収入をいくらと認定するか、②住宅ローンをどのように考慮するか、③夫婦の一方が海外に在住する場合、海外赴任手当をどのように考慮するかなど多くの論点が存在するケースがあり、単純に婚姻費用算定表通りで決まるケースは意外と少ないように思えます。

もしご夫婦間で別居中の生活費の問題が生じてしまった場合、ぜひ当サイトにご相談下さい。

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